akiee piano blog

40代ピアノ愛好家の自作曲紹介、音楽ネタ。それ以外も。

粋なお爺ちゃんとカモメの水兵さん

お爺ちゃんの話です。

粋な人でした。
ブルージーンズに赤チェックの
ネルシャツが定番たスタイルで、
出掛ける時には必ずハンチング帽を被り、
真っ赤な二人のりミニクーパーに乗り込む。

朝食はフランスパンと年季の入ったコンロ式
コーヒーメーカーでじっくり落とした
コーヒーと決まっていて、甘党のお爺ちゃんはたっぷり砂糖とミルクを入れて、美味しそうに飲んでいました。

鼻歌は決まって、かもめの水兵さん。
しーろい帽子、しーろいシャツ、しーろい服
と唄っているときは上機嫌の証拠。
大好きな庭のお手入れにいそしんでいました。

晩年は施設で過ごしました。100歳のお祝いを一室借りて開いた時には、繰り返し、繰り返し、ありがとうと言って涙をこぼしていました。大好きな甘口の赤ワインで顔を赤くして、料理も驚くほどいっぱい食べて。

若い頃、お抱え運転手をしていたこともあり、
車椅子の自走がまた粋でした。
小刻みに切り返し、方向転換するさまには
譲れない誇りを感じました。

そんなお爺ちゃんも、
段々と現実世界と空想世界が混濁していきました。

今朝、玄関に米俵が詰んであったんだけど、
誰が置いてったんだ?

電気屋が冷蔵庫持ってくるから家にいないと。

もうずいぶん会ってないな。こんなに大きくなったのか?可愛いなあー。

月に一度の面会が、私たちとは違う時の流れの中を生きるお爺ちゃんには大層久方ぶりの対面だったようで、挨拶で泣き、帰り際に泣き、喜びも寂しさもひとしおでした。
それでも、誰か一人でも用事で来ていないと、
○○がいない、どうしたんだ?としっかりと
身内のことを覚えていました。


ある日、私はこんな夢を見ました。
私はベランダに立っていて、足元を猛スピードで霧が流れて行きます。さらわれたらどうなるのかな?と思っていたところで、突然、
ガチャン!と大きな音がして飛び起きました。家族が湯呑み茶碗を割った音でした。
もー!ビックリさせないでよ!と時計に
目をやると間もなく深夜0時という時間でした。
奇妙な夢と重なって、印象に残りました。

翌朝、母から、祖父が亡くなったと
連絡がありました。消灯時間の9時から、
見回りの深夜2時の間のことだったそうです。

私たちはその晩、住まいから遠く離れた
海辺近くの宿に泊まっていました。
お爺ちゃん、かもめの水兵さんになって、
知らせに来たのかな?
スピリチュアルとは無縁の私ですが、
そうであってほしい、最後のメッセージで
あってほしいと今でも思っています。

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お爺ちゃん愛用の品。形見分け。