遠い転機をふりかえる
わたしの転機は約20年前のゴールデンウィーク。
大学を卒業して、オフィスワーカーになったものの、お局とうまくやれず、僅か一年でドロップアウト。
嫌われてもしょうがない自分だったと思う。
だから、その人を恨んではいない。未だに怖いだけ。
その後はいつやめてもいいような短期バイトをしながら就職先を探すことにした。
求人雑誌をめくっていると、ゴールデンウィーク限定のリゾートバイトの募集が載っていた。どうせ、連休中は就職活動できないし、面白そうだし行ってみようということで、あまり深く考えず応募した。
説明会&面接会が都内で行われ、大勢の若者が集められた。ほとんどは学生で、私は自分が年を取っている気がして少し決まり悪かった。まだ20代なのに、そんな考えは全くもったいないと今ならわかるけど、その時は、自分は若くないなんて思ってしまった。
面接は感じ良くすすんで、配属先は軽井沢のホテルに決まった。
ホテルに到着すると、そのまま、社員食堂に集められた。
総勢80人くらいはいただろうか。
ホテルのマネージャーがやってきて、レストランの割り振りを発表した。
学生の多くは、洋食バイキングや大型和食レストランへ割り振られた。
そして、ほんの数名の社会人フリーターの我々はフレンチレストランへ回され、そのまま、配属レストランへ散った。
私が行くことになったそこは、別棟で洒落たレストランだった。大丈夫かな?と不安になった。学生時代も多少なりともウエイトレスのバイトはしたことはあるが、そんな気取った感じじゃないし、経験といえるほどでもない。
他の面々も不安で、どうしよう…と小声でもらしていた。
研修内容は、トレーの持ち方、皿を4枚もつ練習から始まる。まぁ、これは予想してた。
だけど、バスケットに入れたパンを掴む練習は想定外。トングではなくて、大きいスプーンとフォークみたいなもの2本を上手いことトングみたいにして掴むのだ。
これが、難しくて、コロコロ転がしまくっていた。
あとは、数字の1から10までと、前菜、魚料理、肉料理、デザートなどをフランス語で暗記。
これを、翌日のディナータイムまで課せられた。
完璧ではないまま、本番を迎え、初日はお客様の前でもパンを転がしている常態だったが、最終日を迎える頃にはだいぶ板についていた。
そして、そのレストランの空気感がとても好きになっていた。
旅先での食事を楽しまれている幸福感とテーブルトークの軽いザワザワ感と、絨毯をパンプスで踏みしめ、さりげなく様子を伺い、タイミングよく次の料理のオーダーを通して、滞りなくお食事を楽しんでもらう充足感。
オフィスワークの頃にこんな気持ちになったことはなかった。まさに、転機との出会いだった。
これはあくまでも私におけること。世間一般を言っているわけではない。
私はこの仕事を気に入り、ホテル側も私を気に入り、そのままそこに住み着き、半年後には正社員になった。
そこで、仕事をするなかで、若い男性客から、かっこいいですね、天職ですね!と言われたことが、
それがお世辞でも、私にとって、決定的な転機になったと思う。
そこで、数年働いたのち地元へ帰ったが、それから今に至るまで、私のお仕事人生は、何らかのサービスを直接に人に提供するものが殆どだ。
向き不向きは人それぞれ。
何がいいなんてことはない。
とはいえ、凄いと感嘆してしまうお仕事をされているかた、クールで頭のいいオフィスワーカーさんも、このはてなブログではいっぱいお見かけして、時に、自分がちっぽけすぎて恥ずかしくなる。ちっともお金持ちになる要素もないから情けなくもなる。
子供が小さいうちは、職種よりも日数や時間の条件を優先したし、休みやすいかどうかも大切だった。
その中でまた小さな転機の積み重ねがあっての今。
遠い昔の転機をふりかえって、明日また、頑張ろって思った。
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